夜明け    塔野夏子


あの日吹いた風の感触
あの日手にした果実の色
君はそれらを静かにたずさえて
もう次の目指す彼方を見ている

汚れた夜にどんなに絡みつかれても
ますます極まりゆくイノセンス
君にしか明けない夜明けがあると
知っているから

君がこれから往くのは
誰一人知ることのない道
けれど君が戴く空にはいつも

数知れぬ無数の祈りが満ちているだろう
そして君はその傷口からさえ
誇らかに星と虹とを放つだろう