灯 台      塔野夏子


コーヌコピアから
闇色の花と果実とがこぼれる
誰もがそんな夢を見て眠る頃

僕たちは街を抜け出した
走って走って
今は岬の突端

僕たちはそこで
波の音に包まれたけれど
降るような星を見あげたけれど

それさえもダレカが造りあげた
舞台装置なのかもしれないと

幾重にもどこかへ抜け出しても
そこもまたダレカの手の内なのだと

思ってしまう心がかなしくて
だから僕たちはせめて
互いの存在をこの岬の突端の夜に
たいせつに灯しあうのだ