時をかけて       塔野夏子


僕が気づくようになったように
そう 君が自分ではそれと気づかないまま
僕に送ってきたかずかずのサインに僕が気づくようになったように
君もやがて 気づくようになるだろう
いや ある意味君は すでに気づいているのだ
ただ気づいていることに 気づけずにいるだけで

君のもとへと僕から
かずかずのサインが送られてきていると

空の微妙な色あいに
風の息づかいに
耳に触れては過ぎてゆく言葉と言葉のあいだに
眠りの中 夢で感じるなつかしい気配に
君と僕とは ずっと交わし合っていたのだと ひそやかなサインを

それらはすでに 僕らの世界のいたるところに
散りばめられている まるで立体星座のように

君と僕とは そうやって
すでに幾重にもつながりあっているのだ
それと気づかなかっただけで
もう僕らのあいだには 出会いの輪郭が少しずつ
透明に築かれてきているのだ

その輪郭が完成するとき
僕らは最後に気づくだろう
君が誰で 僕が誰なのか
お互いの姿をそのときはじめて
目(ま)の当たりに認めながら