静かな夜          塔野夏子


もの云わぬひとつのイメージのまわりを
惑星のようにめぐる数多のイメージ

その幾重もの囁きに
耳かたむける夜

合わせ鏡の中
無限の拘束と
無限の解放

何処からか浮かびあがる言葉たちが
その背後の闇にたいせつに潜めているもの

その朧な輪郭に
目を凝らす夜

「君」が居てくれるなら
きっともっと深みへと
おそれずに僕は降りてゆけるだろう