虹の国       塔野夏子


列車の窓から

小さな虹が立つのを見た

と つぎつぎに

いくつも小さな虹が架かりはじめた

家々に 木立に 丘に……


列車は走りつづけ

小さな虹はつぎつぎ 生まれつづけた

この景色を飾ることを

無上の歓びとしているかのように


やがて列車は高台の駅に着き

私は降り立ちそして眺めた

眼下一面 数えきれぬほど

小さな虹が架かっているのを

家々に 木立に 丘に……


      
この前さいごにここに来たのはいつでしたか と
      
答えられない問いが 耳元をすぎてゆく