なつかしさの消息    塔野夏子


ああ淡いいたみを帯びて
心はとめどなくたなびいてゆく
その果てに何があるのか知らない
   来し方へか
   行く末へか
      呼ばれているのか
      (さよなら)

ああかすかに青い光を帯びて
心はきりもなくたなびいてゆく
   指からは尽きることなく
   透きとおった砂が零れつづけて

誰が居るのか
何が在るのか
      あの遠い日横顔の面影か
      やわらかな青い空の下の緑の丘か
   何を呼びかければいいのか
      (さよなら)

ああどうかおしえて欲しい
なぜ心はこんなにもたなびいてゆく
      二度と戻れない処へか
      決して辿り着けない処へか
   誰を求めて
   何を求めて
      (さよなら)

指からは尽きることなく
透きとおった砂が零れつづけて