ララバイを探して 塔野夏子
捩れた寓話たちが行き交う
水ぶくれしたエモーションたちがのたうつ
得意げな狂気たちが劈いてゆく痕が痕が
幾筋も黒く爛れている
互いに投げつけあう痛みの信号たちが
時空に罅を入れつづけている
異臭の立つ炎たちがあちこちの旗竿にひるがえる
指し示す方向を忘れた標たちが
酩酊の中に沈んでいる
ソレラをうまくすり抜けてゆくつもりなのに
いつしかソレラに踊らされている
いつからこうなんだろう
いつまでこうなんだろう
わからない
ただ 眠りたいだけ
ただ 夢を見たいだけ
砕けてしまったり千切れてしまったりした心
それをそっと拾いあつめて
あるべき場所へ還してくれるようなララバイたちは
みんな怯えて身を隠してしまったのかな
――わからない
ただ 眠りたいだけ
ただ 夢を見たいだけ