かなしい夏     塔野夏子


夏の首すじが
眩しい

何もすることのない午後

空気さえ発光している

しなやかな夏のゆびさきが
飽きもせずあやとりしてる

夏はあの木立のてっぺんあたりで
太陽に唇を盗まれる



かなしい夏 U


秘密の庭
したたるような緑の
茂みの陰で
夏は誰かと
逢瀬を重ねる

そんな昼下り
時はいつも
だから
オレンジ・マーマレイド色に
なってしまう



かなしい夏 V


しなやかな夏のゆびさきが
飽きもせずあやとりしてる

嵐の雲 ひとつ

太陽が機嫌をそこねたみたいに
光線のぐあいがちょっと変になる

嵐の雲 ふたつ

空のいろもなんだかおかしい
風も妙にけだるい温度

嵐の雲 みっつ

夏はなんにも意に介さずに
一心不乱にあやとりしてる

嵐の雲 よっつ いつつ

とりつかれたみたいに 
あやとりしてる

嵐の雲 むっつ ななつ



※「嵐の雲」というあやとりがあり、雲の数を一つ、二つ、三つ……と次々増やしてゆくことができる。