序章 −out of the lost planet− 塔野夏子
失われた星のうえ
すべてを覆いつくしてかたく閉ざされた眠りから
あるときふと
ただひとりが目を醒ます
彼は歩きだす
かたく眠りに閉ざされた失われた星をはなれて
無辺世界へと歩きだす
失われた星について
彼は何の記憶も持たない
目の前に広がる無辺世界について
彼は何ひとつ知りはしない
ただ 彼が目醒めたことで
ただ 彼が歩きだしたことで
新しい物語がはじまってゆく
彼の背後で
失われた星が
より深い闇へと沈みはじめた――
けれど彼はふり返らずに
歩いてゆく