ひとすじの冬 塔野夏子 夏に生まれ 夏という文字を名に持ち 夏をひたすらに愛しうたってきた そんな私の中に 気づくとひとすじの冬があった 灰色に やや銀を帯びて 静かに つめたくさびしく いつ私の中に生まれたのか それはわからない けれど気づくと たぶんもうすでに長いことあったのだと 感じられる…… そしてそのひとすじの冬の彼方に 少年がひとり立っている 遠いそのシルエットは 小さく しかし黒くくっきりと浮かんで