午後の舟      塔野夏子


六月の
曖昧な空の下
白くたたずむ部屋
横たわる私の身体から
刻一刻と
鼓動がこぼれ落ちる

けだるい指で
クロニクルのページを繰る
季節は私には
いつも晩くやってくる

忘却は
残酷なほどたやすい
そこに意志さえなければ

さまよい
はぐれてゆく意識の分
自らを蝕む言葉が
おのずから綴られてゆく
だから最初からそこに
救いを求めたりしない

所詮は
誰もが気づかずに
どこかでタナトスに忠実なのだ

刻一刻と
存在がこぼれ落ちる
無の海へと
そしてそこを忘却のように
私をのせてひとつ漂う
午後の舟