甘い重力    塔野夏子


気怠く対流する六月の中
わたしは甘い重力に捉えられ
浮かぶように沈んでゆく
六月の気怠い流動が
肌を撫で髪をそよがせるのを感じながら
浮かぶように沈んでゆく

いつしか身のまわりには
いくつかの空白が漂っている
それらは夏の侵入
を待つための――

まだどこかためらいがちな素足に
六月の気怠い流動は
とりわけ繊細に感触され
その中を浮かぶように沈みながら

梔子の花が
ひらくのを気配する
わたしを捉えている甘い重力が
またひときわ甘くなる

身のまわりを漂う空白たちが
すこしずつ 波うちはじめる――