明るい日     塔野夏子


世界の終わりを思わせるほど明るい日
地の果てのようながらんとした広野に
世を捨てたようにひとつ立つ古い塔のそばで
君は僕を待っていた

僕らは手をつないでだまって塔をのぼった
ひょっとしてこの塔が僕らごと
くずれ落ちやしないかなんて少しだけ心配しながら
でもそれもいいかもなんて少しだけ思いながら

てっぺんについて
僕らは見わたした
手をつないだまま一面がらんとした広野を
そしてまるで潮騒でも聴いているみたいに
ずっと寄り添っていた
どうしようもなく明るい日の
ただなかで
どうしようもなくふたりきり

ふたりとも本当に何も云わないままで

これが世界が終わったあとの
僕らの記憶