逢いびき      塔野夏子  *私家版詩集『ラボラトリ』より


街はあいかわらず
メタリックな反芻をくりかえす
そんな中に沈み込んでいる君の
終わらない夜を救えなどしないけど
それでも手を差しのべよう
君が君だからという
ただそれだけの理由で

宙を泳ぐ
半透明の魚たちとか
ゼリー状にゆらめく街路樹とか
そんな電気仕掛けの憂鬱たちを
今夜はうまくすり抜けて逢おうよ
きれいな空を
さがしに行こうよ

幾重にも視界にまとわりついてる
膜を剥がしてゆくんだ
目に映るすべてが
虹色に発光しはじめるまで

君に
刻まれた傷を癒せなどしないけど
それでも手を差しのべよう
君が君だからという
ただそれだけの理由で

たとえこの手が
うつろに君を突き抜けてしまっても